中国:艾未未氏と単独会見 脱税容疑はぬれぎぬと主張
【北京・工藤哲】中国の著名な芸術家で、08年の四川大地震で校舎倒壊の被災者名簿をとりまとめるなど、政府に批判的な言動を続 けて一時拘束され た艾未未(がい・みみ)(アイ・ウェイウェイ)氏(54)が9日、北京市内で毎日新聞との単独会見に応じた。艾氏は「アラブの春」に 触発された中国での民 主化要求デモの呼びかけで人権活動家への監視が強まる中、4月に拘束され、6月の釈放後に脱税容疑で巨額の追徴税を課せられた。艾氏 は「拘束中は政権転覆 に関する尋問ばかりだった」と証言、脱税容疑は拘束を正当化するためのぬれぎぬだと主張した。
艾氏は、北京国際空港で香港行きの飛行機に乗る直前に突然拘束された当時の状況について、「頭から黒い布をかぶせられ、知らない 場所に連行された」と恐怖を語る一方、「番号をつけられ、50回余りの尋問を受けた」と厳しい取り調べの状況を明らかにした。
81日後に保釈されたが、拘束中に国営新華社通信が、艾氏が管理する会社で脱税が発覚したと報道。税務当局は今月1日、計約 1522万元(約1億9000万円)の追徴税の支払いを命じた。
しかし艾氏は、「拘束中の尋問で脱税に関するものはなかった」とし、「(脱税容疑をかけられた)会社は私のものではなく、関係が ない」と否定した。
さらに、自身の置かれた状況を知った人々がネットを通じて金銭支援に乗り出していることについて、寄せられた総額が「600万元 (約7300万円)を超えた」と明かした。支援の輪の広がりについて「多くの人が当局のやり方に憤っている結果だ」と語った。
艾氏は「私の置かれている状況は日ごとに悪化している」と再拘束の可能性も示唆。「(日本の人々にも)中国の人権問題にもっと関 心を持ってもらいたい」と訴えた。
艾氏は保釈の条件として外国人と会うことなどを禁じられ、沈黙を続けてきたが、追徴課税など一連の当局の対応に反論するため、今 回の取材に応じた。
◇艾未未氏とは・・・
父親は文化大革命の時代に迫害された浙江省出身の詩人、艾青氏(故人)。本人は美術や建築の分野で活躍し、08年の北京五輪の メーンスタジアム 「鳥の巣」の設計にも携わった。人権活動家としても知られ、08年の四川大地震の際には、当局が消極的だった校舎倒壊の被災者名簿を とりまとめた。北京在 住。
◇艾未未氏と一問一答
【北京・工藤哲】毎日新聞と会見した中国の人権活動家、艾未未(がい・みみ)(アイ・ウェイウェイ)氏のインタビュー内容は次の 通り。
--4月の拘束時の状況は。
空港にいる時に黒い布をかぶせられ、知らない場所に連れて行かれた。着いた先の人間は私を知らなかった。尋問は国家政権転覆扇動 罪に関することばかりだった。釈放の条件として、インターネットの利用や外国人と会うことを禁止された。
--当局からは脱税の疑いが持たれている。
私と(容疑を持たれている)会社は関係がない。当局は、1500万元(約1億9000万円)あまりの追徴税を払えば罪を認めたこ とになると言い、払わなければ新たな罪を科すと言う。
--インターネット上で資金援助をする動きが広がっている。
私に対する中国当局のやり方に多くの人は理解できないでいる。支援者たちは「艾未未を罰するのは我々を罰すること。罰される重荷 を共有したい」と表明してくれている。
--一部の中国紙は寄付について違法集金だと批判している。
中国には今、特殊なメディアしか存在しない。恥知らずな下流メディアについては言及しない。
--中国の人権状況について。
私について言えば、秘密裏に連行されたり、別の罪名を着せられたり、人の知らない場所に送られることもあり得る。
--日本人に言いたいことは。
多くの人に中国の社会問題に関心を持ってほしい。もし招かれたなら訪れたい。
毎日新聞 2011年11月10日 2時30分(最終更新 11月10日 7時09分)
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